平成26年に成立して以来、空家所有者の注目となっていた空家対策特別措置法(正式名称:空家等対策の推進に関する特別措置法)が、平成27年を契機に完全施行されました。
今回は、空家との向き合い方を考えさせられるこの法律をわかりやすく解説しつつ、税金との兼ね合いや取るべき対策をご紹介致します。
Contents
空家対策特別措置法ってどんな法律?
空家対策特別措置法は、老朽化した住宅が近隣住民や周辺環境に与える影響を考慮するという目的で作られた法律です。その背後には中古住宅の活用という経済的・政治的な意図が見え隠れするものの、基本的にはこの認識で良いでしょう。
わかりやすく説明してるサイトがないので、その内容をすごく簡単に要約すると…
住む気がないクセに古い住宅を持ち続ける人は、せめて管理するように。しないなら住宅と認めないから、土地の優遇固定資産税を取り消すよ。
と言った感じでしょうか。
本項では、空家住宅が与える弊害や問題点を解説するとともに、こうした空き家が増えてしまう原因を分析します。
老朽化の進んだ空家の何が問題?
老朽化が進んだ住宅は、倒壊や崩落、害虫や悪臭等の様々なリスクが内在します。
崩落や倒壊は被害が敷地内に留まるとは限らず、接続道路や隣接地に被害が及ぶ事は往々にしてあるでしょう。また、害虫や悪臭も近隣住民にとっては悩みの種となる要因です。
もちろん、空家の所有者がこれらのトラブルに対して適切に対応すれば、大きな問題は生じません。しかしながら、現実にはコストや手間の問題から、なんら処置を施さない所有者も多く、議論され続けて来た部分です。
日本の空家はとても多い
日本の住宅事情は欧米と比べると少し特殊で、空家がとても多い点が特徴です。統計情報によると中古住宅の取引件数は新築住宅のそれよりずっと少なく、市場規模は比較的小さなものとなっています。
こうして空家が増えてしまう理由は、日本特有の複数の事情が絡み合っているとみるべきです。
と言うのも、日本の戸建て住宅の大半は木造建築であり、欧米のそれと比べて老朽化のペースがとても速いと言われています。木造住宅の資産価値は築20年もすれば、ほぼ無価値と言われており、中古住宅の流通を妨げる要因1つです。
また、日本にはバブル時代から特有の「新築志向」という意識が内在しているため、住宅購入層の多くは、中古住宅を避ける傾向があることも原因でしょう。
このほかにも、撤去費用や固定資産税の問題など複数の要因が、中古住宅の増加を押し上げています。
空家ってどんなもの?誰が指定するの?
では、続けて具体的な本法の内容を見て行きましょう。
「空家」とはどのようなものを指すのか。そして空家と見なされた結果、その住宅はどのような顛末を辿るのかを、順番に整理します。
空家ってどんな家?
本法で定義する「空家」とは、本法2条にて「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」と定義されています。少し難しい言い回しかもしれませんが、概ね一般常識的な「空家」を意味していると言えるでしょう。
具体的な基準としては、水道にガス、電気といったライフラインの使用状況や、人の出入りなどの現況を総合的に判断すると定めています。長年居住の用に供されていない場合などが、「空家」と判断されるわけですね。
より不名誉な称号「特定空家」指定
本法は第3条において通常の「空家」とは別に、「特定空家」という概念を設けています。
特定空家の定義を要約すると、「そのまま放置すると倒壊や崩落、衛生上著しく有害となるおそれのある家」を意味しています。つまり、そのまま放置するわけにはいかないレベルの、かなり状態の悪い空家と理解すると良いでしょう。
詳細は後述しますが、特定空家指定を受けると所有者はより強く対応を求められます。
市町村が中心となって空家の調査を実施
ところで、問題となる空家を決めるのは一体だれなのか、気になりませんか?
本法は空家の認定は「市町村」が中心になって行うことを予定しており、市町村には空家認定を行うために、「敷地内への立入調査」や「固定資産税の課税対象等の個人情報閲覧」を認めています。
つまり、空家と思われる住宅を放置すると、市町村の職員や委託業務事業者が立ち入り調査を求めてくるわけです。この立入調査を理由なく拒否すると「20万円以下の過料」に処せられるため、注意しておきましょう。
固定資産税が増加するってホント?
世間では本法の成立・施行を境に「空家指定されると固定資産税が倍加する」とささやかれています。恐らく、本稿の読者の大半はこの部分が気になるのではないでしょうか。
この項目では、空家指定を受けた事による処分内容と、固定資産税への影響を解説します。
空家を放置すると改善を促される
所有している住宅の現況が著しく悪い場合、調査の結果「特定空家」として指定を受けることもあるでしょう。
本法は市町村は特定空家の所有者に対して、様々な形式で改善を促すことができると定めています。わかりやすく以下の表記にまとめましたので、まずは確認してみましょう。
特定空家に対する市町村の処分例
助言・指導 | 形式としては比較的軽いカテゴリー。法的に強制力を伴わないため、従わなくとも助言や指導以上に酷いペナルティを受けることはありません。 |
勧告 | 主に行政指導に従わない所有者、状態の悪い住宅に対して行われます。特定空家が勧告を受けると「固定資産税上の優遇処置の対象外」となる点には注意。 |
命令 | 行政処分と呼ばれる重たい処分です。命令に従わない所有者は50万円以下の過料に処せられます。 |
行政代執行 | 命令に従わない所有者の代わりに、行政が必要な措置を講じる強制力のある処置です。必要となった費用は、所有者の負担に。 |
勧告を受けると固定資産税上の優遇対象外に!
特定空家に対して市町村行うの処分内容のうち、最も注目すべき部分はやはり「勧告による固定資産上の優遇措置から外れてしまうこと」でしょう。
わたしたちの生活スペースとなる居宅は「土地と建物」が別々に課税されています。このうち土地に対する課税には「その上に住宅」が建築されている場合、面積に応じて1/3~1/6の優遇税制を受けることができるんです。
ところが、本法の「勧告」は“こんなものは住宅とは認めない”と言っているに等しく、この優遇税制の対象外とするペナルティを内包しています。その為、「特定空家指定を受けると固定資産税が増加する」という噂が流れているわけですね。
土地活用を検討する方が増えている
本法は状態の悪い特定空家を摘発するというニュアンス含んでいるため、指定を受けてしまいそうな中古住宅を保有している方には、何らかの対策を講じることをオススメします。
対処方法としては、売却や賃貸にリフォーム、取り壊しなどの様々な候補が挙げられるので、不動産専門家による助言を受けると良いかもしれません。また、第三者目線での現況を知るために、自己所有の物件のインスペクションを検討するのも1つの手です。
本法は施行後既にいくつもの処分実績を有しており、形式だけの法律ではありません。いずれにせよ、放置を続けて特定空家指定を受けることは、是が非でも避けるべき事態です。