空き家の増加に伴い、数年前より「空き家の公営住宅化(準公営住宅)」が議論されるようになりました。高齢者や低所得者・子育て期世帯など、いわゆる住宅弱者に向けて快適な居住空間を提供しようという計画です。
その後2017年に入り、これらの制度は「住宅セーフティネット法の改正」という形で実現。空き家の活用にお悩みのオーナーさんに向けて、リフォーム補助や家賃補助などの支援制度となって実を結びました。
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そこで今回は、これら住宅セーフティネット法にまつわる各種制度と、その活用事例をご紹介。制度がわかりにくく複雑と感じているオーナーさんに向けて、情報発信を行います。
Contents
公営住宅の現状と今後
空き家の公営住宅化案は現在、「住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅(登録住宅)」として国と各自治体により進められています。
この制度はオーナーさんのお持ちの空き家物件を、低所得者や高齢者・子育て期世帯(要配慮者)の入居者の受け入れを拒まない住宅として提供することで、不要な空き家を活用するという方法で、様々な事情により物件数が停滞する公営住宅と、高齢化社会などの影響により増加する要配慮者数に伴い、導入が決定した制度です。
進まぬ公営住宅化
現状、住宅セーフティネット住宅はあまり活発な動きを見せていません。
セーフティネット物件の登録サイト「セーフティネット住宅情報システム」で検索できるは要配慮者向け物件は、2018年4月26日時点で僅か621戸。
これは、予定されていた自治体による改修支援制度や家賃低廉化補助制度が、ほとんど導入されていないことが原因です。
実際、現状では法律が施行されたばかりで各種支援制度が整っておらず、国による「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」(リフォーム支援)や一部自治体による改修費の補助制度以外に、目立った動きはありません。
参考セーフティネット住宅情報システム
参考住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
導入を検討する自治体も登場
ただし、「将来的な展望」としては話が違ってきます。
住宅セーフティネット制度の主な骨子は、「改修補助」及び「家賃低廉化補助」でしたが、2018年6月頃よりこれらの制度を検討する自治体も登場。
改修補助や家賃補助の導入は自治体の判断に任されるため断定することはできませんが、今後広がりを見せるものと考えられます。
公営住宅の活用の方法・流れ
改正セーフティネット法に基づく「登録住宅」として活用するためには、主に以下の手続を踏まなくてはなりません。
補助金を受けるには?
住宅セーフティネット法に基づく各種補助制度を利用するためには、登録住宅を「住宅確保要配慮者専用住宅」としなくてはなりません。
「住宅確保要配慮者専用住宅」とは、登録住宅のうち要配慮者を拒まないだけでなく、要配慮者以外の入居者の入居を認めない物件です。(つまり、一般的な収入や属性を持つ優良顧客を入居させることができません)
補助金を受けるための流れ
- 住宅確保要配慮者専用住宅として登録
- 改修費等補助の申請・審査
- 交付決定通知を受領
- 事業着手(契約)
- 事業完了後に完了実績報告書を提出
- 補助金額の確定・審査
- 補助金の交付
メリット・デメリット
「住宅確保要配慮者専用住宅」は、各種補助金や支援制度の対象となるメリットを持つ反面、専用住宅としての縛りにより、特定の属性以外の入居者を入居付けすることができないデメリットを有しています。
「住宅確保要配慮者専用住宅」のメリットは?
「住宅確保要配慮者専用住宅」のメリットは以下の通りです。
国および自治体の改修補助が受けられる
登録住宅を住宅確保要配慮者専用住宅とする場合、必要なリフォーム工事において改修費の補助を受けることができます。
補助金額は工事内容により異なります。国と自治体の支援を合わせて利用することも可能です。(補助金がアップする)
なお、現状導入されている国の制度では、「最大100万円/戸」です。
家賃低廉化補助
家賃低廉化補助とは、「住宅確保要配慮者専用住宅」に入居している要配慮者の負担を軽減するために、「最長10年間、最大4万円/月」の家賃を支援する制度です。
低廉化補助金は賃貸人等に支払われるため安定的な運用が可能である上に、入居者が低額所得者でなくなる等の事情により補助金が打ち切られた場合、通常の家賃を請求することもできます。
(ただし、契約書にその旨特約記載する必要があります。詳しくは「大希企画」までお尋ねください。お問い合わせはこちら)
シェアハウス化もOK
この事業は通常の賃貸物件のみならず、共同住宅(シェアハウス)も補助の支援対象です。
物件の性質に応じて運用方法に広がりが出るため、オーナーにとってはメリットだと言えるでしょう。
「住宅確保要配慮者専用住宅」のデメリットは?
「住宅確保要配慮者専用住宅」のデメリットは以下の通りです。
一般入居者を入居付けできない
専用住宅は要配慮者専用として運用することが求められているため、「一般的な属性を持つ優良入居者」の入居を行うことができません。
仮に専用住宅の入居者が集まらず、空室期間が2年・3年と伸びようと、空室リスクは甘受することになります。
自治体によって内容が異なる
この制度はある程度自治体の裁量が認められているため、補助内容が各自治体の方針により変動します。
そのため、あるエリアとまた別のエリアで補助内容が異なるケースも。空き家物件の所在地ごとに、詳しい内容を確認する必要があります。
活用モデル事例
登録セーフティネット住宅の活用モデル事例です。
空き家をシェアハウスに
引越しを契機に使わなくなった空き家を「専用住宅」としてシェアハウスに改修した事例です。
物件の特徴
- 述べ面積は160㎡程度
- 室内は合計6部屋。間取りはバラバラ
- 設備や内装が老朽化
元々は普通の空き家であり、上記のような特徴を有していましたが、補助金を申請を行った上でリフォームを決行。
- 間取り工事で1部屋あたりの面積を約18㎡に統一
- 設備や内装を一新
- 手すりをつけ段差を排除しバリアフリー化
などの工事を加えることで、閑静な立地に相応しい、高齢者向けシェアハウスとしての生まれ変わりました。
空き家をアパートに改修
新しく住宅を新築したため、使わなくなった空き家を活用した事例です。
元の空き家は建築規模に比べて敷地面積がとても広く、交通の便も良かったため、
- 空き家を思い切ってアパートに改修
- 耐震工事や耐火工事も実施
- 広大な土地を入居者用の駐車スペースとして活用
上記を中心とした工事を実施。住宅確保要配慮者専用住宅として生まれ変わりました。
まとめ
以前から議論されていた「空き家の公営住宅化(準公営住宅)」は、セーフティネット法の改正に伴い、住宅確保要配慮者専用住宅として実現しました。
家賃低廉化補助や改修補助を伴う充実した制度ではありますが、現状では一部の支援策の導入に留まっています。
ただし、今後自治体から制度実現への検討が進められる予定が確立しており、将来的には期待できる制度です。
大希企画では、常に空き家オーナー様にとって最適解となる活用方法を模索しております。同制度を利用した空き家活用につきましては、どうぞお気軽にお問い合わせください。
登録住宅(セーフティネット法第8条に係る住宅)として活用するための流れ
(提出先は物件所在地により、都道府県であったり、市であったりしますので、ご注意ください)
参考千葉県「住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅の登録申請について」