高齢化社会の顕著な日本にとって、介護施設は社会的需要の強い施設です。
設立には厳しい条件が求められますが、手厚い補助金や税制軽減などの優遇措置は、国からの心強いサポート。
更に、最近は介護施設の各種規制も緩和され、より多様なサービスが提供されつつあります。
そこで今回は、介護施設の概要やそのメリットを解説。介護ビジネスのスタート事例をご紹介しようと思います。
Contents
介護施設の現状・今後の需要
介護施設は増加の一途を辿っており、今後更なる需要が見込まれる業界です。
多くの高齢者・介護関連施設が市場規模を拡大する中、2011年より高齢者向けの施設として設立した「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も、導入以後連続して増加を記録。
サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムの資料によると、平成23年12月時点では「112棟・3,448戸」に過ぎなかったにも関わらず、平成30年3月時点では「6,999棟・229,947戸」にまで膨れ上がりました。
近年では杜撰な経営により倒産する事業主も見られますが、日本の高齢化傾向は今後ますます顕著になることは明白。高齢者向け介護ビジネスはまだまだ可能性を秘めていると言えるでしょう。
引用住宅情報提供システム サービス付き高齢者向け住宅の登録状況
介護施設への活用の方法・流れ
介護施設として効果的に活用するためには、立地や設備、面積など対象物件をあらゆる角度から分析・検討しなければなりません。
STEP1:市場調査
介護事業として成功するためには、まず市場調査が必要です。
該当物件の立地や条件・周辺環境等を勘案して、想定収益・展望を算出します。
- 物件のニーズを調査する
… 計画地周辺の高齢者数・所得額等 - 立地環境を調査する
… 計画地周辺の医療関連施設や利便施設の配置 - 競合施設を調査する
… 計画地周辺の競合施設の情報を分析 - 自治体調査
… 計画地の所轄する自治体に対して情報収集
STEP2:コンセプト
計画物件のコンセプトを設定します。
高齢者と言っても様々なユーザー層が存在するため、「誰に対してどのようなサービスを提供するのか?」を考慮して、計画を定めます。
- 施設の種類
- 設計コンセプト
- 想定入居対象者
- 戸数・間取り等
- 家賃・補助金の打診 他
介護施設に限らず、賃貸経営全般において欠かせない大事な部分です。ご自身で運営される場合は、専門家等の助言を求めることをオススメします。
STEP3:行政との協議
多くの介護施設では、行政が設立基準などについて規定を定めています。設計図や計画書・申請書など、行政との協議に必要な書類をそろえましょう。
また、補助金や助成金を申請する場合も同様です。
STEP4:建築工事・開業
行政との協議がまとまれば、いよいよ着工に入ります。
コンセプト通りに施工が進むかに着目しつつ、現場スタッフの募集や外部業者との連携を確認。建物竣工後は、入居者募集や事業サービスを確認しつつ、経営を軌道に乗せます。
メリットデメリット
介護施設のメリットとデメリットをご紹介します。
介護施設のメリット
介護施設は社会的事情により望まれている背景もあり、多くのメリットを有しています。
補助金・助成金が豊富
多くの介護施設では、建設・改修にあたって各種補助金・助成金制度の適用を受けることができます。
介護施設の建築や改修には大きな費用がかかるため、嬉しい制度です。
税制面で優遇
税制面での優遇も、介護関連施設のメリットです。
主に固定資産税や所得税・法人税などが減額対象となります。
郊外需要も高い
高齢者向け施設は一般的な賃貸物件と違い、郊外立地にも需要が見込める事業です。
また、通常は建築物に制限がかかる市街化調整区域において、建築を認める自治体もあり、総じて「郊外物件にも可能性がある活用方法」と言えるでしょう。
つまり、「郊外だから需要はない」と諦めていた不動産が、介護施設として大化けすることもあり得ます。
介護施設のデメリット
介護施設のデメリットをご紹介します。
サービスの質が影響する
介護施設は設備が良いというだけで成り立つビジネスではありません。
現場で働くスタッフの質や、外部サービスの内容には、常に注意を払う必要があるでしょう。サービス面の不満が講じると、経営に深刻な打撃を与えます。
活用事例
空き家物件を介護施設としての活用した事例を見ていきましょう。
古民家を介護保険ホームに
敷地面積約1,800㎡という非常に広大な空き家を持つオーナー様が、自治体や地元商工会に「介護施設」として活用したいとの意向を提案。
要請を受けた自治体や地元商工会は、有識者を交えて委員会を設立。デイサービス指定を受けることで、所有者と10年間の定期借家契約を締結しました。
本施設の特徴は以下の通り。リフォーム事業時に介護事業ならではの細やかな配慮を行うことで、円滑な土地活用を果たした事例です。
- 施設の一部を地域に提供して地域交流性を高める
- 強度補強や断熱、バリアフリー化等需要の高い工事を実施
- 貸主ではなく、借主が改修工事を負担
先祖伝来の土地を高齢者専用賃貸住宅に
「先祖伝来の土地を社会貢献に」とのお考えを持つオーナー様は、ご自身が有する不動産を高齢者専用賃貸住宅に活用することを決意。
駅から徒歩19分と距離があるため通常の賃貸住宅としては不利でしたが、
- 日当たりの良さを重視した間取り構成を取ることで、全室の日照を確保。
- 共用部分の一部を食堂に改修。希望者に配膳を行う。
- 荷物が多い入居者に向けてトランクルームを設立
上記のような高齢者向けリフォームを行うことで、高齢者のニーズに的確に答えた物件として生まれ変わりました。
まとめ
介護施設は高齢化社会による社会的要請が強い施設です。
助成金や支援制度も充実を見せているため、「使っていない空き家を介護施設に活用したい」と考える方も増えています。
持て余していた空き家を介護施設として活用し、社会貢献とビジネスの両面で成功することができれば、大きな充実感が得られるでしょう。
ただし、介護施設の立地や設備に対するニーズは、通常の賃貸住宅とは大きく異なります。制度的に厳しい要件が求められている施設も多いので、「空き家を介護施設へ!」とお考えのオーナー様は、一度専門家へのご相談をオススメします。