「家賃低廉化補助制度」は、住宅セーフティネット法の改正に伴う補助金制度の中でも、目玉に位置する制度です。
要配慮者※のうち、低額所得者を受け入れることで、国と地方公共団体がオーナーに対して「月額4万円」の家賃補助を供出。
空き家や土地活用にお悩みのオーナーと、入居審査にハードルを感じる要配慮者の間を繋ぐ、画期的制度として注目されています。
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「家賃低廉化補助制度」とは?(制度の概要)
「家賃低廉化補助制度」は、低所得者の受け入れ物件を提供するオーナーに対して、1戸につき「月額最大4万円」を補助金として供出する制度です。原則として最長10年間(自治体の判断により20年間)と定められているため、オーナーの長期安定的な利益確保に繋がります。
一般的に低所得者は滞納リスクが高く、通常の賃貸物件の入居者としてはあまり魅力的ではありません。しかし、同制度はオーナーが直接補助金を受け取ることができるため、収益確保が可能です。
家賃低廉化補助制度のメリットまとめ
- 国・自治体から最大月額4万円の補助金が出る
- 最長10年間ほど適用される(自治体の判断により20年間)
- 補助金はオーナーに対して直接支給される
適用されるための条件は?
家賃低廉化補助制度を適用するためには、「住宅セーフティネット制度」が要求する基準を満たすものではなくてはなりません。
住宅セーフティネット制度とは?
平成29年4月に公布された住宅セーフティネット法の改正法が同年10月25日に施行され、高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など、民間賃貸住宅や空き家を活用した制度のこと。
参考住宅:住宅セーフティネット制度について – 国土交通省
建築物に求められる条件
建物に対して以下の基準が要求されています。ただし、同制度は自治体による供給促進計画の影響を受けるため、実際にはある程度地域差が生じるでしょう。
住宅セーフティネットの「建物」に対する条件
- 床面積が25㎡以上であること
- 一定の耐震性能を有すること
- 建築基準法・消防法違反がないこと
- 家賃が近隣物件と比べて高すぎないこと
なお、同制度は通常の賃貸物件だけでなく、「シェアハウス」にも適用が可能です。ただし、シェアハウスは専有面積などにおいて別規定が適用されるため、導入を検討の際は必ず確認しておきましょう。
入居者に求められる条件
また、同制度を利用する場合、入居者の属性についても制限が加わります。制度の形骸化を防ぐための措置であり、名目上の「セーフティ物件」といった経営スタイルは認められません。
住宅セーフティネットの「入居者」に対する条件
- 物件を低額所得者などの要配慮者専用住宅にすること
- 原則公募による募集。抽選など公正な方法で入居付けを行うこと
- 暴力団関係者などの反社会勢力を受け入れないこと
- 入居者の所得が「低額所得」であること
ここでいう「公募」とは、要配慮者向け物件を掲載したウェブサイトである「セーフティネット情報提供システム」に登録することを指しています。
参考セーフティネット情報提供システム|新規登録申請方法について
「家賃低廉化補助制度」を活用する
「家賃低廉化補助制度」は、従来敬遠されてきた低所得者を積極的に受け入れやすく、空室率に悩んでいた物件や使っていない空き家を活用するチャンスです。
予算の関係で実際に導入されるのは今後の話となりますが、モデルケースを想定して活用例をご紹介しようと思います。
例間取り3Kがたったの4室しかないボロアパート…
リノベーション工事で1Kに間取り変更。きれいな内装や設備で「需要度アップ+資産価値増加」。更に戸数が増えた分だけ、補助金の受給額にも期待が持てます。
例両親の遺した古い空き家…誰も住まないしどうしたら?
要配慮者向けの「シェアハウス」として活用。耐震工事など最低限の改修だから、投資コストを抑制できます。
セーフティネットを空室対策に活用する
セーフティネットは空室対策に活用することが可能です。
入居募集の際に「セーフティネット登録物件」を前面に出すことで、
- 要配慮者からの積極的なコンタクト効果
- 家賃や入居審査に対する期待感
など複数のメリットを享受することができます。
あまり知っている人がいないのでは?
ところが、この制度はまだできて間もないので、知らない方が多いのが実情です。もちろん、これは賃貸物件にとっては致命的。
- 「セーフティネットは誰も見ないんじゃ…」
- 「制度を知らない人にはどう入居付けするの?」
不安に感じることもありますよね。制度ばかりが先行して、周知が遅れては元も子もありません。
空室対策に不動産業者の活用も!
セーフティネット登録物件は、自治体や居住支援協議会を通じて要配慮者への入居付けを行うものと定めています。
しかし、これは「一般的な不動産業者や仲介業者」による入居付けを排除しているものではありません。
つまり、オーナーは不動産業者を活用した空室対策も可能です。業者が持つ販路やネットワークを通じて入居付けが行われるため、一般の不動産を扱っているのと同じ感覚で経営することができるんです。(注意:公募要件を満たすためにセーフティネットにも登録する)
もちろん、これはオーナーにとって大きなメリット。同制度はこれから導入が検討される補助金ですが、今後の動向に目が離せそうもありません。
まとめ
家賃低廉化補助制度は、リフォームや解体の際の補助金と異なり、オーナーの長期安定的な利益につながる制度です。
導入にはいくつかの要件をパスする必要がありますが、アパートや空き家の活用に悩んでいるオーナーさんにとっては、検討の価値があるのではないでしょうか。
改正セーフティネット法は2017年4月に公布、10月に施行された法律です。そのため、十分な予算の確保ができず、実導入に至っていない部分もありますが、オーナーと要配慮者の双方にメリットのある制度だと言えるでしょう。
高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する人のこと