「1戸あたり最大100万円」と聞くととても魅力できですよね?
2017年10月に施行した改正セーフティネット法により、「住宅確保要配慮者専用賃貸改修事業」と呼ばれる補助金制度ができました。
この制度は、空き家やアパートを生活困窮者向けに改修したオーナーに対して、政府が補助金を支給するというもの。既に公式事業として展開されており「1戸あたり最大100万円」の補助金が得られます。
使途未定の空き家や空室に悩む賃貸物件をお持ちのオーナーさんにとって、新たなビジネスチャンスです。
住宅セーフティネット法とは?
住宅セーフティネット法とは、正式名称を「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」といい、低所得者や被災者、高齢者など、住宅確保に配慮を要する方に住宅を供給するための支援の指針を定めた法律のこと
参考住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律-電子政府の総合窓口e-Gov
Contents
「住宅確保要配慮者専用賃貸改修事業」とは?
住宅確保要配慮者専用賃貸改修事業(以下 要配慮者専用改修事業)とは、お持ちの空き家やアパートを低額所得者や高齢者・障碍者(要配慮者)向けに改修する際に、オーナーに対して「1戸あたり最大100万円」補助金を支給する制度です。
使っていない空き家や需要の低下が見込まれる賃貸物件を、改正住宅セーフティネット法が要請する「要配慮者専用住宅」とすることで、従来入居付けが難しかった低額所得者などを救済する目的で作られました。
補助金の金額は?
要配慮者専用改修事業の補助金は、「国が直接支援するもの」と「地方自治体と連動して支援するもの」の2種類が存在します。
補助金を申請するオーナーは両者のうち「どちらか一方」を選ばなくてはなりません。両者は「補助割合」や「金額の上限」が違います。
住宅確保要配慮者専用賃貸改修事業の補助金体系
国による直接支援 | 国と自治体との連携支援 | |
---|---|---|
補助割合 | 工事費のうち1/3を支援 | 工事費のうち2/3を支援 |
上限金額 | 1戸あたり50万円 | 1戸あたり100万円 |
注1:シェアハウスの場合、上限額は専有部分1室あたりの価格に置き換えて算出
特定の工事を利用すると上限額が2倍に!
ひと口に改修工事と言っても、クロス交換など簡易なものから、間取り構造そのものをリノベーションする大規模なものまで、実に様々なものが挙げられます。
そこで要配慮者専用改修事業では、オーナー側の負担を考慮し改修費用のかかる
〇 旧耐震基準物件の耐震改修工事
〇 適用基準を満たすための間取り変更
〇 空き家活用に向けたシェアハウス改修
などを対象に、特例的に制度支給額の上限の引き上げを決定。
「1戸あたりの直接支援を100万円、自治体との連動支援を200万円」と、通常改修の2倍にあたる上限額を提供することで、空き家の積極的な活用を促しています。
適用するための条件は?
要配慮者専用改修事業による補助金を受けるためには、
〇 対象物件を要配慮者向け賃貸住宅制度への登録物件とすること
〇 実施する工事内容が改正セーフティネット法の求める基準を満たすこと
上記2つの条件が定められています。
これだけ見ても分かりにくいと思うので、それぞれの具体例を確認してみましょう。
登録に必要な基準は?
「要配慮者向け賃貸住宅の登録制度」とは、対象物件が要配慮者の入居を拒まない住宅であることを、地方自治体などに登録する制度です。
改正住宅セーフティネット法に伴うほぼ全ての補助制度の前提となっている条件であり、登録には主に以下の条件が定められています。
要配慮者向け賃貸住宅の登録制度の主な登録基準
- 一定の広さの居住面積が確保されていること
- 一定の耐震性能を有していること
- 消防法や建築基準法に違反しないものであること
- 要配慮者の入居を不当に制限しないものであること
- 近隣の物件と比べて家賃が高すぎないこと
対象工事の基準は?
対象工事は具体的に定められています。事前に確認しておきましょう。
配慮者専用改修事業の対応工事一覧
- 耐震改修工事(昭和56年5月31日以前に着工した物件)
- 間取り変更工事
- シェアハウスへの改修工事(用途変更に伴う消防法、基準法への適合)
- バリアフリー改修(手すり、階段、浴室等の設備改修)
- 居住のために必要な工事(インスペクションにより必要と認められるもの)
- 居住支援協議会が必要と認める工事(防火防音、ヒートショック対策など多岐)
- 上記に係る調査設計計画の作成によるもの
注2:居住のために必要な工事を実行する場合、対象物件が「過去3か月以内に賃貸・居住の用に供されていないもの」に限られます。
要配慮者専用改修事業のデメリット
要配慮者専用改修事業は改修工事の大きな助けとなる制度ですが、この制度はメリットばかりではありません。
10年以上の「要配慮者専用住宅」が条件
要配慮者専用改修事業による補助金を適用するためには、対象物件を「10年以上は要配慮者専用住宅として扱うこと」が求められています。
つまり、高額所得者や通常の収入を有する単身赴任者などの、一般的な賃貸物件の需要層を受け入れることができません。
要配慮者の属性を選択できる
住宅セーフティネット法が求める「要配慮者」には、
- 低額所得者
- 子育て世帯
- 高齢者
- 障碍者
- 外国人
など複数の属性が存在します。
改修制度を適用する場合、オーナーはこれらの属性から入居対象者を自由に選択することができるため、
- 低額所得者から外国人世帯まで幅広く受け入れるセーフティ住宅
- 子育て世帯に限定した、あんしん家族向けの世帯住宅
などなど、オーナーの考えるコンセプトに従って、様々なチャレンジが可能です。
「要配慮者専用改修事業」のモデルケース
要配慮者専用改修事業のモデルケースをご紹介しようと思います。
事例:バリアフリー化で需要増!高齢者向け住宅
もともと生活困窮者や高齢者向けに提供していた物件を、改修工事によりバリアフリー化。既存入居者の確保に加えて、新規入居者の集客へとアプローチした事例。
問題点本物件は築29年の旧式物件。室内はバリアフリーがされておらず、事故やケガのリスクがあった。また、孤独に悩む高齢者によるトラブルも発生。
管理の手間やコストの増大が懸念されていた。
解決策高齢者にとって危険な「居室ごとの段差」を排除してバリアフリー化。また、リスクの高いキッチンには、安全性の高いIHヒーターを導入した。
更に敷地内に談話室を設けることで、入居者同士の交流を促進する措置を実施。
結果事故やケガに対するリスクは低減。内装が新しくなり需要の拡大が期待されるように。また、談話室は孤独に悩む要配慮者の方々の「セーフティネット」として活躍。近隣住民とのトラブルが減少した。
まとめ
要配慮者専用改修事業による補助金制度は、空き家や賃貸物件にお悩みのオーナーさんにとって関心度の高い制度です。
補助金の額も大きく、「これから空き家を活用しよう!」とお考えの方にとって大きな助けとなるでしょう。
また、デメリットに見える「専用住宅」も、入居属性を上手に活用することで「あんしん」や「バリアフリー」を意識した、付加価値を生み出すことが可能です。
まさに、オーナーの腕の見せドコロといえるのではないでしょうか。